凪に溺れる
青羽悠
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刊行日 2020/07/11 | 掲載終了日 2020/07/15
ハッシュタグ:#凪に溺れる #NetGalleyJP
内容紹介
小説すばる新人賞受賞『星に願いを、そして手を。』の鮮烈なデビューから三年――
現役京大生となった若き才能が、青春の難題に立ち向かう!
仕事も恋愛も惰性の日々を過ごしているOLの遥。
ある日遥は、無名のアーティストの曲がYouTube上で「バズって」いるのを見つける。
その曲にとてつもない引力を感じた遥だったが、数日後、そのアーティストの公式サイトで、「2018年10月23日、Vo霧野十太逝去。27歳」の文字を目にする。
なぜ二年も前に亡くなった無名のアーティストの曲が、今更注目を浴びているのか。霧野十太とは何者なのか。
一人の天才に翻弄された6人の人生を描いた、著者渾身の青春小説。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784569847238 |
本体価格 | ¥1,600 (JPY) |
関連リンク
NetGalley会員レビュー
彼女のクラスに霧野十太(じゅった)という転校生がやってきた。自分が転校してくるのは毎度のことだけど、自分が転校性を受け入れるのは初めてで、彼に興味を持った。十太はギターの練習場所を探しているというので、自分が自主練をしているプールサイドでならいいよと告げた。その日から夏佳と十太は毎日プールでそれぞれの練習を続けた。
音楽の才能って残酷だなと思うことがある。もの凄く才能があるけど、人間関係で上手くいかなくなる人もいるし。ひとりでは大したことがなくても、誰かと組むことによって上手くいくこともある。アマチュアでやっている分にはいいけれど、プロになりたいと思ったとたんに家族から反対されたり、プロで上手くいったからといって、それがずっと続くわけでもない。
十太は言葉は少ない人だけど、その音楽は饒舌。音楽は彼の人生のすべてだけど、それだけない何かが欲しかったのかもしれない。
十太の曲は人の心を動かした。聞いた人を幸せにした。十太は幸せだったのだろうか?少なくともギターを弾いている間は幸せだったんだろうな。それ以外の時間、十太はどう生きていたのだろうか?
デビュー作から3年、二十歳の著者。
若者らしい溌剌さ、というよりは若者らしいもどかしさと
誰かといても誰といても孤独感が溢れる作品だった。
1人のミュージシャンの一曲に多くの人の感情が年月を越えて絡み合う、
芯のある作品だった。
十太に知って欲しかった思いがありすぎて切ない。#凪に溺れる #NetGalleyJP
デビュー作の「星に願いを、そして手を。」を読んだ時に、「まだ16歳の高校生なのに、どうして自分と年齢も性別も違う人をこんなにもリアリティをもって描写できるんだろう」と驚きました。
そして2作目の今作。やっぱり青羽悠はすごかった。
その名を知られることなく短い生涯を終えた、ミュージシャンの霧野十太。
彼の残した楽曲「凪に溺れる」は、彼の死後を生きる人々に少しずつ波紋を広げ…。
特に今回は女性の描き方がいいなと思いました。
美人の受付嬢だったり、オリンピックに手が届きそうなアスリートだったり、居場所がなくて苦しむ女子高生だったり。本作には様々な女性が登場しますが、どのキャラクターも嘘くささがなくて実在しそう。
彼はもうこの世にいない。
最初にぽっかり開いてしまった大きな穴を、過去の物語を知ることで少しずつ埋めていった。
彼が何を思い、何を追い求め、何を失い、何を得たのか。
人々の記憶と繋がりが彼を形にする。
確かに彼は存在していて光を放っていた。
その光を受け取った人々の中でそれは消えることなく輝き続けるのだ。
音楽の持つ可能性とか持続する力を強く感じた小説でした。いつまでもいつまでも心の中に潜んで鳴り続けるメロディー。そこから波及して行くそれぞれ各人の十数年の歩み。これ程深くなくても遥か昔に聞いたメロディーがいつまでも心に残り、時折思い出してはその情景に浸ることは誰しもあるのではないか。
物語がすすむにつれて、環境も立場もばらばらの5人の男女の世界が十太を中心に繋がってゆく。
ここで描かれる人々は十太をはじめ、みんな生きづらそうに見えた。
大人になってゆく過程で捨て去るはずの青臭さを今も誰もが抱えている。
彼らから見た十太もまた不器用で、孤独な男だ。
5人の物語を通して、十太の人生を振り返ったとき、
その無垢な生き方に胸が切なさでいっぱいになる。
どうしてそんなことで死ななければいけなかったの?
十太はちゃんと幸せって思えてたのかな。
最期の瞬間、彼は何を想ったんだろう。
周囲から見た十太だけでは心の内までは推し量ることもできなくて、
十太の胸の内を覗いてみたくなった。
音楽ならいくらでも曲に詞をのせられるし、声を出せるのに。
夏佳と十太の道がもう一度だけ交わることを願わずにはいられなかった。
十太にも互いが中学生の頃に結んだ約束を違えることなく、
それぞれの道を進み続けたことを知って、笑ってほしかった。
夏佳にとってそうだったように、十太にとっても初恋だったのだと思う。
十太の書いた歌詞に込められた夏佳への想いが、
もう取り戻すことのできない日々を思い出させ切ない。
ページが、まるで海のようだった。
引いては寄せるさざ波のように、ずっと想いが揺れている。
薄ぼんやりとした空が、明けるのか暮れるのかわからなくなって、時の風に耳澄ます。
何度も、何度もくり返し流れる歌に心たゆたう。
ひっそりと立ち尽くしたまま、溺れる感覚をかすかに纏う。
その先に、その先に何があるんだろう。
見つめた遠くにある予感に周波数を合わせて、耳を澄ませて聴く祈り。
そこから生まれる仄かな光を、ただ信じてみたくなる。
そんな、切なくもそっと希望を導き出せるようなストーリー。
紡がれた言葉で魅せてくれた映像と音楽が、読み終えた後も、ずっと心を離れない。
青春ってこんなだっただろうか。
彼らのように、友達や学校や将来の不安に、こんなにも真っすぐ向き合っていただろうか。
やりたいことってなんだろう、やらなきゃいけないことってなんだろうと
自分に真剣になっていただろうか。
もっとぼんやりしていて、もっとおざなりだったように思う。
正面から、真っすぐ悩んで真っすぐぶつかって真っすぐ傷つくって、本当に怖い。
だから、すかしてみたり知らないふりをしたりして、よけてしまうけれど、
ぶつからないといけない痛みってあるんだ。
私はそれをせずに大人になってしまっていた。
懸命に生きる彼らの歩く道は、再びは交わらない。
それが妙にリアルだった。
そして、この物語に、
人生にはそんな小説みたいな展開はそうそうない。
だけど、その時その瞬間、真っすぐ向かって行け、
もう一回ちゃんと青春して、成仏させろよ、と言われているような気がした。
小説すばる新人賞受賞の『星に願いを、そして手を。』を読んだ時の感想を探したら、「将来楽しみな新人作家の登場に間違いない。次作に期待!」と書いていた。
あれから、3年。期待していた次作がようやく登場した。
ミュージシャン・霧野十太を中心にした6人の人々が語り手となるのだが、プロローグで、いきなり十太の死が告げられる。それも27歳という若さで。
その思いがけない始まりに驚き、十太がどんな人物だったのか、どんなふうに生き、どうして死んでしまったのかを知りたくて、作品の世界に飛び込んだ。そして、溺れた……。
若者たちが、自分の行く先に迷い、もがき、溺れながらも、前を向こうとする姿が痛々しい。そして、切ない。また、眩しい。
十太はもういない。でも、6人は生きている。十太の曲とともに生きていく。そして、7人めにもきっと受け継がれる。
青羽さん、次作にも期待しています!
#NetGalleyJP
静かでも出会った人の心を揺さぶらずにはいられない十太の音楽。それを知ってしまい人生が変わっていったひとたちのそれぞれのエピソード、そして足りないピースを埋めるかのように音楽に邁進し続ける十太が何を思っていたのか。ほろ苦くはありましたけど、それでも彼が生み出した音楽は生き続けていて、それが受け継がれてゆくことを予感させる結末はとても印象的でした。
心に響く曲、気持ちを持って行かれる歌声ってあるよね。
十太の歌う曲の歌詞『黒い海』が強烈に印象に残った。
〈海ってこんなに真っ黒なんだね。呑み込まれそう〉。
十太を巡る話。関わった人たちが語る十太。音楽で繋がる梓、正博、弘毅。
歌を受け取る夏佳、聖来。十太を見つけた遙、光莉、
そして北沢「デビューに向けた話をするはずだった日に、彼は亡くなった。懐かしいし、本当に悲しい」
#NetGalleyJP
物語には十太目線のパートだけがなくて、だけど各登場人物の目線から彼の抱えた孤独がぽろぽろとこぼれ落ちて、悲しくなった。彼は神様なんかじゃなかったと思うよ。彼の音楽はどうしても、彼を神様に仕立てあげてしまったけど。
1人の少年と、彼の奏でる音楽と人生に心を動かされた人々。彼の曲は、迷いがあるとき、心のすき間を埋めてくれるような心地よさがあり、どこまでも行けてしまいそうな思いを馳せらせ大きく感情を揺さぶる。私は、そんな曲を作り歌う彼の心が読めず、彼を知りたくて彼の抱えるものが知りたくて、惹きつけられながら読み続けた。私たちは、いつのまにか、日々の人生に溺れつつ、何かを諦めながら生きている。何かを貫き通す者もいる。どの選択も人それぞれの生き方。途中、胸が苦しく、激しい感情が押し寄せてきた。でも、私は彼の心と生き方が好きでたまらない。人生はとても儚いけれど、彼の音も思いも紡がれていく。希望という名の音をやさしく包み込むようなラストに胸が熱くなりました。
霧野十太というひとりの青年を、彼の才能と彼の歌に翻弄された人たちの側から語る物語。
十太目線では語られる章がないため、彼自身が何を思っていたのかは伝わって来ない。それが物語をより一層切なくしている。
十太がそれぞれにとって凪であったように、読んだものの心にも凪を起こす。
彼は何を思っていたのか、幸せだったのか。その凪は決して心地悪いものではない。
波が来る、水平線の先を見る
物語には続きがある。
例えそれが悶々とした日々を過ごす僕でさえ。
すごい小説を読んでしまった。
自分をこれまで形成してきた根本的な何かが、揺さぶられたような感覚がある。
どうやらこれは元バンドマンであった僕だからとか、ある特定の人だけが特別に感じることではなさそうだ。
ある1人の青年の唄が、意図せずにそれぞれの人生のあるべき姿やポジション、または人生観へと疑問を投げかける。
希望と絶望。
物事には2つの要素があるという当たり前の事への存在意識を駆り立てる。
この感覚は波のようだ。
ただ水平線から押し寄せる波。
神様に会うために溺れてみたが、穏やかな場所にこそひそむ日常の不協和音。
クリーントーンに薄くかかるディレイやリバーブの残響がファズサウンドで一気に爆発する。
涅槃に憧れた僕の領域。
なぜか涙が止まらなかった。
抽象的になるが、今日を確かに生きたい人に読んでほしい珠玉の1冊。
「すべてのものは繋がるべきして繋がっている」のならば。十太と夏佳をどうかもう1度、と願わずにはいられなかった。
夢と理想を求め、現実を知り、確かに信じたものがあった、それだけを胸に進み続けるのだとしたら、なんて孤独で辛い道なのだろうと思う。
この作品は青春小説だけれど、十太の母親の「次第にね、こうして微笑むことしかできなくなるの」という言葉が1番胸に残ったのは、私がもうそういう世代だからなのかな。
主人公の十太の視線が描かれていないのに、読み手に深く感じさせる所が素晴らしいと思います。
読後、これは読むべき物語だと思った。静かながら、圧倒的なものを感じる。私もこの音楽を聞きたい。そして、今の自分の毎日がこれから進むべき道に続いている事を確認したい。もがきながら亡くなっただろう十太だけど、多くの人の道標になったはず。その事実が十太に届けばいいのに‥。最後に秋穂という女性がとても素敵な女性だと思った。
メジャーデビュー目前の天才ミュージシャン十太。彼の音楽に心を揺さぶられた多くの人たち。夢を追い続ける人、自分の限界を知り夢を諦める人、自分がどう生きたらいいかわからない人、多くの若者に影響を与えた十太。若い作者ならではの感性で、夢や希望や悩みや不安など、揺れ動く心情が良く描かれていると思う。今後の作品も読んでみたいと思いました。
何度も読みながら鳥肌が立った。
こんな読書時間は久しぶり。
すごくすごく良かった。
最初の章を読んだだけで大好きだと思えた作品。
無名のアーティストの曲とYouTubeで出逢い、何故かとても心に響き突き動かされる。
青年が作ったある曲を軸に6人の人生が描かれる。
甘酸っぱく切ない青春の日々。
自分にはどんな未来が待っているのだろう。
将来に不安を感じた10代。
生きる意味を与えてくれる出逢い。
青羽さんの瑞々しい文章、胸に迫りくる焦燥感がすごくいい。
読みながら懐かしい気持ちになる。
霧野十太、大宮夏佳の2人で過ごした時間が好き。
とても切なく辛いけど読んで良かったとすごく思う。
小説すばる新人賞史上最年少受賞された作品『星に願いを、そして手を。』は16歳の頃に書かれた作品とのことでそのデビュー作は気になりながら読めてなかった。
デビュー作も読みたい。
青羽悠さん初読みだったけど、かなり胸に響いて感動した。これから追いかけていきたい。
#凪に溺れる#青羽悠 #netgalley#netgalleyjp
メジャーデビュー前に亡くなった霧野十太、彼と彼の音楽をめぐる連作短編。十太に音楽の才能があるのは判るのだけど、それ以外のところがなかなか捉えどころがなく、いまいち魅力が伝わらない。でも、まだ何になりたいのかも何になれるかわからない青春時代の息苦しさだとか、壁にぶつかり折れそうな心情だとか、瑞々しい筆致で描かれていて、もうとっくに過ぎ去った時代の青くささ、甘酸っぱさを久しぶりに感じることができた。
青羽悠さん、2作目。若さが眩しい。青春って初恋っていいなぁ。とドキドキしながら読んでいた。いろんなことが、いろんな人が一つの楽曲で繋がっていく。上手い。両親の過去とか郷愁が感じられる。まだ大学生という作者。本人はこの主人公のように迷ってるのかな。今後も期待 。
すべてのものは繋がるべくして繋がっている。そう感じた。タイトルの「凪に溺れる」は曲名のことだ。霧野十太というかアーティストの中学から27歳までの生きざまと、その彼に関わった人たちの人生が語られている物語だ。この話しの展開は珍しい。霧野十太が主役なんだけど、色んな視線で語られるため、彼がどういうことを考えて生きていたのかが、まったく想像もつかない。人は知らない者を恐れるか、その存在異常にリスペクトするものである。ここで描かれている霧野十太は、或る人にとっては神であり希望であり夢であるのだ。それがいい。
とても心に響く小説。ぜひ、読んで欲しい。