兄の名は、ジェシカ
ジョン・ボイン /著 原田 勝/訳
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刊行日 2020/04/16 | 掲載終了日 2020/05/26
ハッシュタグ:#兄の名はジェシカジョンボイントランスジェンダーLGBT #NetGalleyJP
内容紹介
4歳年上のジェイソンは、14歳のサムの自慢の兄だ。穏やかで優しくて、忙しい両親にかわって、小さいときからサムの面倒をよくみた。
サッカー部のキャプテンで、学校ではみんなの人気者。だけどこのごろ、少し様子が変わったみたいだ。
ジェイソンはある日、自分はトランスジェンダーであり、男であることが耐えられない、と家族の前で告白する。
大好きな兄の変化にサムはとまどい、閣僚の母親、その秘書を務める父親はうろたえる。
おりしも現首相が退任し、サムの母親は有力な次期首相候補になるはずだったが、ジェイソンのことがマスコミに取り上げられるようになり……。
トランスジェンダーは「病気」ではなく、自身の性の自覚の問題であることがはっきりと書かれている。
「性同一性障害」という用語もあるが、それそのものが治療の対象ではないことや、性的嗜好も、また別の問題であることがさりげなく、しかしはっきりと描かれている。
LGBTやトランスジェンダーのことが、わかりやすく物語の中で語られているので、読者は物語を楽しみながら理解を深めることができる。
生物学的な性、社会的な性、そして本人が自覚する性の問題を、家族4人の立場から、誠実に、時にコミカルに表現した青春小説。『縞模様のパジャマの少年』のジョン・ボイン、最新刊。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784751529478 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
この物語は、途中までホラーだ。両親はあなたを病院に送り、あなたを電気ショック療法で治そうとする。仲の良かった弟はあなたの辛さをさっぱり理解せず、あなたが何者であるかを受け入れてくれない。ジェシカの目で見たこの物語は、一人の若者が経験するにはあまりに辛く恐ろしい物語だ。この世界に大勢いるジェシカたちの物語をホラーで終わらせないために、彼女たちの物語を知ってほしい。
トランスジェンダーの話。自分の性別に疑問を持ってきた17歳の男子が散々悩んだ末に家族にカミングアウトする。政治家である母親、その秘書の父親、兄をヒーローと慕ってきた弟は受け入れ難い内容に愕然とする。家族の気持ちも分かるが一番辛く苦しいのは本人なのに…と理解の無い家族に少々の苛立たしさを感じる。息子の幸せと言うが、何が幸せかは本人にしか判らないのでは。正直に生きられるのか、家族の絆は戻るのか。この本は勇敢に戦うトランスジェンダー達への作者からのエールなのでは。
サムの4つ上の兄ジェイソンは、男性の身体だが、自分は女性と感じるトランスジェンダー。サムにとってジェイソンは、いつも憧れのかっこいい兄だった。サッカーが誰より上手で学校でも人気者。難読症のサムの面倒もよく見てくれた。だが、17歳のとき、カミングアウトし、髪をポニーテールにして、女らしい服装にする。
両親は思春期で精神がおかしくなったたと考え、治療のためにカウンセラーをうけさせる。13歳のサムは、兄のために学校でいじめを受けるようになり、ポニーテールをしている、男らしくない兄が嫌でたまらない。
トランスジェンダーをあつかった作品。LGBT関連の作品が最近増えてきているが、この作品は、他とちがう大きな特色が2つある。
ひとつは、主人公(であるとともに語り手)が、トランスジェンダーのジェイソン自身ではなく、弟のサムであること。13歳でトランスジェンダーではないサムは、兄の感覚が全く理解できないし、受けいれられない。でも、兄が苦しんでいるのはわかるし、両親の動揺と混乱もわかる。裏切られたようで兄を憎む一方で慕い続ける。素直な弟の視線と、その複雑な思いを中心にすることで、カミングアウトがまわり(特に家族)に、およぼす影響と苦悩を、両親の偏見や無理解を批判することなく、ユーモアもまじえて描くことに成功している。
トランスジェンダーの感覚がわからないのは、読者のわたしにもいえることで、自分が女だと感じるけれど男を愛したいわけではないというあたりに、複雑さを感じ、少し理解が深まった気がした。
もうひとつの特色が、母親が次期英国首相候補の閣僚、父親がその私設秘書という設定だ。両親にとっては、家庭も仕事場で、常に戦略を練っている。そのため、まさにいまの英国の政治問題があちこちに飛び出す。EU離脱、難民、アイルランド問題……。そこには、LGBTだけではなく、保守的で偏見にこりかたまった考え方への批判が、強く感じられた。両親は政治家だから、うまくカモフラージュしているが偏見はあり、ジェイソンが指摘している。また偏見がないといいつつ、外国人やLGBTを嫌う60代女性もちらっと登場して、根強く残る偏見を露呈させている。
こうしてLGBTだけでなく、すべての偏見へとテーマを広げている。
さらに作品内には、今時の音楽、ドラマ、コミックなどの話題が散在する。エド・シーランを聞くのが止まらなくなるなど、おもしろかった。
いまこそ、読む本だと思う。
もしも、自慢の兄が突然「姉」になってしまったとしたら…。
主人公のサムは難読症を抱える13歳。母親はまもなく首相の座を手に入れられそうな敏腕政治家で、父親は母の秘書として働いている。そして自慢の兄であるジェイソンがいる。かっこよくて、サッカーが上手くて、ジェイソンはサムの憧れだった。ところがある日、ジェイソンが「自分はトランスジェンダーである」と告白し…。
トランスジェンダーというテーマを当事者ではなく、その家族にスポットを当てて描いた小説。
主人公のサムが13歳、つまり”性を意識し始める年頃の子ども”であるという点がこの作品の秀逸な点だと感じた。
父と母も息子がトランスジェンダーであるということを認められず、酷いことを言ったりやったりしているのだが、サムも子どもであるがゆえにジェイソンの気持ちや状況が理解できず、自分の気持ちばかりを押し付け続ける。
「ひどい弟だな」と思うが、これが当事者家族のある種の実態なのだろう。
読みながら当事者家族の葛藤を追体験することができた。
「トランスジェンダーを取り巻く人々の葛藤」を描いた作品として本書はとても優れていると思う。
こういう話って、分かりたくない人にとってはとてつもなく分からない話なんだろうなぁって思います。友だちのことだったら冷静に話ができても自分の家族のこととなると、徹底的に「そんなはずはない!」「治らないのか!」と否定してしまう人が多いのだろうなぁと思います。
本当に辛くて悩んでいるのは本人なのに、「親の気持ちも知らないで」とか「世間体が悪い」なんて理由で話を聞いてもらえないのは、本当に切ないですね。
ジェイソンにはローズおばさんという理解者が現れたから、次のステップへ進めたけど、そういう人が現れなかったら、ノイローゼになってしまったり、最悪の場合死んでしまう人もいるのです。
サムは、最終的に「兄さんの名は、ジェシカだ」と言えるようになったけど、そこに至るまで随分悩んだんですよね。家族も、友達も、みんなでそれぞれの違いを理解しあえるようになるには時間がかかります。
LGBTやトランスジェンダーの問題だけでなく、人はそれぞれに違っているのです。いろんな考え方があり、いろんな感じ方があり、いろんな生き方があるのです。それをお互いに尊重しあいたいと思います。それこそが「愛」なのですから。
一気読みでした!
他人をありのままに受け入れることがいかに難しいか、自分の知っていることだけに当てはめてしまうことが如何に相手を傷つけてしまうのか、考えさせられる本でした。
ジェシカは信頼しているからこそ最初に家族に打ち明けたのに、結果として読み手がイライラする程家族が無理解に感じてしまうほど、アイデンティティーの問題はとても難しいことなのだと思いました。
LGBTQにとらわれず、多様性について意識する物語だと思います。サムの思春期男子っぽい素直なところが面白く、堅苦しくないところも良いと思います。
日本人でも『ジェシカ=女の子の名前』というイメージはなんとなくわかる。
そのジェシカという名前が兄の名前という、相反するイメージを思わせるタイトル『兄の名は、ジェシカ』。
恥ずかしながら私はLGBTに関する知識は浅いので、正直そういったテーマを扱う作品を読むには心構えが必要なんじゃないかと思っていた自分がいました。
でも読んでみて、こんなに面白かったとは…と、いい意味で裏切られました!
心と体の性別の違いに悩む当事者とそれをとりまく周りの家族や友人の反応がリアルに描かれていて、笑いながらも真剣にイッキ読みしてしまいました。LGBTについて知識が浅く、なんとなく抵抗がある方にこそ読んでもらいたい良作だと思います。
サムの4才歳上の兄、ジェイソンはサッカーのエース選手で学校でも人気者。サムはそんな兄が自慢だった。ところがジェイソンはある日家族に、自分は心が女性なトランスジェンダーだと打ち明ける。
LGBTのお話はその本人の視点で語られることが多いが、これはその周囲の弟から視点というのがとても良いと思う。自慢の兄だったからこその感情がとてもしっかり描かれている。政治家である母親、その秘書をしている父親という役割の描き方も良かった。
子どもたちに手渡したい本がまた増えました。