晴れ、時々くらげを呼ぶ
鯨井 あめ
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刊行日 2020/06/15 | 掲載終了日 2020/06/14
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内容紹介
現役大学生、受賞!
第14回小説現代長編新人賞、受賞作品。
高校二年生の越前亨は、父親を病気で亡くしてからは母と二人で暮らしており、父親が残した本を一冊ずつ読み進めている。売れなかった作家で、最後まで家族に迷惑をかけながら死んだ父親のある言葉に、亨はずっと囚われている。
図書委員になった彼は、後輩の小崎優子と出会う。
彼女は毎日、屋上で雨乞いのように両手を広げて空を仰いで、「くらげよ、降ってこい!」と「くらげ乞い」をしていた。
彼女を冷めた目で見つつ、距離を取りながら亨は日常を適当にこなしていたある日、亨は小崎が泣いているところを見かける。
そしてその日の真夜中、クラゲが降った。
亨は小崎のもとへ向かうが、小崎は「何の意味もなかった」と答える。
納得できない亨だが、いつの間にか彼は、自分が小崎に対して興味を抱いていることに気づく――。
出版社からの備考・コメント
※発売前作品のため、発売後に読まれる読者の皆様のためにも、「ネタバレ」「外部書評サイトへのレビュー投稿」は極力お控えいただけますよう、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
※※リクエストの承認につきましては現在お時間をいただいております。
校了前のデータを元に作成しています。刊行時には内容が若干異なる場合がありますがご了承ください。
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おすすめコメント
読みすすめながら、ふと、この小説はぼくが書いているのかもしれない、とおもった。
読了後、ほんとうにそうだった、とわかり、こころの底が熱くなった。
読んでいるひとと書いているひとが、ただひとつにつながれる。
読書のささやかな奇跡が、すべての読者の上に、くらげのように降りおちる。 ―いしいしんじ
現役大学生がみずみずしい筆致で描く、高校生の等身大の苦悩と成長。入稿作業のために3回読んで、3回ともホロっときました。本が好きで、物語の力を信じていて、読書が特別なことだと知っている著者による、本への愛に溢れた物語です。実際にくらげが降った時の感動を、噛みしめてください!――担当編集者より
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784065194744 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
気づくと空に向かって、「降れ!」と願いをこめていた。あの頃たどり着けなかった場所は、こんな空の下に伸びていたのか。クラゲを降らせようとする少女と、そのかたわらに佇む少年。次々に本のタイトルが登場するので、本好きな読者にはきっとこたえられないだろう。忘れがたい思いを呼び起こす、青春群像劇。
不可思議な出来事が稀に起こる。これはその部類に入るのか否か。友を思うがため、奇想天外な出来事を起こすことによって世界の機能を麻痺させる。そんなことがあってもいいなとふと思う。それだけ、誰かのことを真剣に思ったら、世界は平和になるのに。
晴れ、時々くらげを呼ぶ
図書委員の主人公とその仲間たちが「自分の好きな本を好きになってくれる人が現れるとうれしい」というシーンがある。これはひとりの本好きとしてももちろんだけれど、本屋で働いててとてもうれしいことのひとつでもある。いつも、この本が好きだ、誰かに届けたい、そういう想いをぎゅーっと込めながら本を並べている。仕事中通りがかりにそっと表紙をなでて、売れますようにというおまじないをかけたりもする。はたから見たら、陳列の乱れを治してるようにしか見えないと思うけれど。そのくらい、自分の好きな本には思い入れがある。だから登場人物たちの本への想いはよくわかる。本がつなぐ関係、本のある空間、世界に本が存在しなければ生きていけないという確信。
物語の中で、少女がひたむきに「くらげを降らせたい」という祈りを空に捧げ続ける。荒唐無稽な馬鹿馬鹿しいおあそび、そう言ってしまうにはあまりに真剣で、そしてその祈りは次第に周囲をも巻き込んでゆく。なぜくらげを呼ぶのか、そもそもなぜくらげなのか、その意味はラストではっきりと示されることになる。とある本の秘密とともに。
本の中に閉じこもり心を閉ざして世界を無関心で生きていくことは、じつはそんなに難しいことではない。でも、それでも、痛みをともなうとしても、つながってゆくことを選ぶ少年少女たち。きらきらした青春小説の中にときどきひそむガラスのような破片に、自分の高校時代を思い出してほろ苦い気持ちになりながらも、 彼ら彼女らへのいとおしく優しい気持ちだけが残る、さわやかの読後感の物語だった。
高校の図書委員である一女子がしていた、一見突拍子もない行動。何故かそれに意味なく付き合って見ていた先輩男子。けれどそこから青春の無謀な群像たちが本気で動き出す…。みんなそれぞれにやりきれない何かを抱えている。窒息しそうな内側を発奮する場もなくやり過ごす日常。やがて、外側への空気穴が、本の言葉によって開かれていく…。ここに出てくるたくさんの本のこと、数々の刺さる言葉は、作者がこれまで出会ってきた本をもとに生みだされたのだろうと思う。大学生である作者もまた、青春の本気の只中に居り、同世代にも、それが今は昔となった大人にも、突き進む熱や対極に振り切れる感情、人としての真面目さ純粋さを、等身大で真っ直ぐに届けてくれる。…泣けた。
たくさんの本が紹介されるので、多くの本と出合いたい人にもそのきっかけとなると思う。
自分が好きな本を誰かに薦めて、それを読んでくれる人がいてくれたらうれしい。
読んでおもしろかったといってくれたらさらにうれしい。次のおすすめを聞いてくれたらなおうれしい。
そんな素直な感情がこもった作品。
世界の理不尽に対抗するため、テロを起こす。でも誰がやったかバレないために、クラゲを降らす『クラゲテロ』。それぞれに想いを抱えた高校生たちがクラゲを呼ぶ。普通の彼らに出来ることは限られていて、その中で出来る精一杯の反抗。最後に降ってきた朝焼けに光る「ミズクラゲ」は一度みてみたい。そして、越前くんの将来を楽しみにしている。
奇跡って起こるものではなく、起こすもの?
大切な人を思う。
絶対的に逃れられない現実をを変えたい。
もう会うことのない人を思う。
荒唐無稽だっていいじゃない。
不思議ちゃんでなにが悪い。
思いの強さがくらげを呼ぶ。
ありえない、できないと決めつけていたら何も変わらない。
思い、伝え、行動する。
人生で大事なことがぎゅっと詰まった一冊。
本が好き、にも色々あり、読み方感じ方にも色々ある。本が好きだから読む。読むことを止められない、離れられない。そして、この本の主人公は過去を取り戻すために読んでいる。
亡くなった父からかけられた呪いの言葉の意味を追って、父の本棚と同じ本を読みながら、決して父の作品には触れない。父を失った大きな虚無が、同じように大切な人(友達)を失った後輩と関わり、共にクラゲ乞いという奇妙な行いを完遂し、その意味を知る事で父の作品と忘れていた過去を取り戻していく。
青春の只中に、クラゲを降らせる!クラゲテロだ!と大人ならばバカバカしいと一蹴することを真剣に本気でやり通す、そんなひと時があっても良いじゃない!と思える、熱量と瑞々しさがありました。
たくさんの実在の本と、その紹介があり、本好きにはそれだけでも堪らないと思います。
本のことを「枕元に置いておきたくなる芸術作品」とは、とても素敵な言い回し。
まるで深海みたいにしんとした静けさや孤独感を感じた、序盤から終盤に向かってどんどん世界が明るく広がるストーリーに温かさを感じました。
クラゲ が降る光景はきっと息を飲む程に美しいんだろうな。ゆらゆらと漂って迷ったり、止まったりしながらも上へ上へ。まるでクラゲ みたいな彼らが好きです。澄んだ空気が漂う物語でした。
主人公の心情に寄り添えるかどうかは人それぞれだろうが、読書(物語)が世界を変える、人生を変えるということへの、強い意志と優しい眼差しを感じる作品。
ちょくちょく、実在の本への言及が出てくる。自分の好きな本が紹介されると嬉しくなるし、知らない本は読んでみたくなる。作者の思うツボ。それが心地良い。
“くらげを呼ぶ”なんて突拍子もないことなのに、思春期の息苦しさを表現するのに、意外とハマりました。亨くんが楽しくなさそうに読書をするのは、読んでいるこちらも苦しくなりました。その中で、“くらげを呼ぶ”女子高生と、図書委員の先輩の存在は息抜きになります。“くらげを呼ぶ”理由と、亨くんの読書の謎は本書でご確認ください。本のタイトルがたくさん登場するので、ここから読みたい本が出てくるかもしれませんね。
突拍子もないことに、ひたむきに一心に突っ走るその眩しさに心を動かされます。
理不尽な世界への、無駄なんかじゃない抵抗…青春が舞う空に、まっすぐな想いをのせてくらげが降る。
海のゆりかごに揺られ、見守るように心がたゆたう。そうしてるうちに、空と海を分けているものがなんなのかわからなくなって、沈んでいた心が浮かばれた気がしました。
沢山の本が登場して、本好きにはたまらない♡
主人公の父親が執筆した本も、一冊まるごと読みたくなるような魅力があり、そのまま刊行してほしいくらいです。
本の魅力、可能性、創造力、人と人をつなぐぬくもり、奇跡。そういった無限大に広がる力が本にはある。そういったことを再確認させてくれる素敵な作品です。
「優しさの本質は他者への興味」
私の心にも刺さりました。
また、有名どころの作家さんとそのタイトルが沢山出てくるので、まだ読んでない作品をあれもこれもと読みたくなりましたし、お気に入りの作品には「そう、そう!」と一緒に会話をしている気分になって楽しかったです!
思春期の閉塞感と葛藤、理不尽に立ち向かう様子は、悪くはないけれどもう一歩踏み込んで欲しかったかな。表面だけなぞった印象がぬぐえなかったけれど、上手くまとまっていたと思います。
本なんて読まなくても生きていける、時間の無駄だと思っている主人公、享。何に対しても距離を取り、周りの人に苛立ち、熱くなれない性格の彼は高校の図書委員になってしまう。
そんな享が図書委員として出会った後輩の小崎優子は毎日のように屋上でくらげが降ってくるよう祈っている。彼女のことを冷めた眼で見守る享だが、彼女がくらげ乞いをする理由を知ったときに、自分の気持ちがひどく動いていることに気がついた。
理不尽な世の中に対抗して、彼らがとった手段、クラゲテロ。若者たちのもどかしい気持ちが痛いほど伝わってきます。
純粋で傷つきやすく、だからいっそう思いを貫ける・・・そんなティーンならではの真っ直ぐさをまぶしく思いました。
登場人物たちが本に関わる理由がいろいろあって考えさせられるし、さまざまな本の紹介もされているので、本の世界が広がるというのもうれしいポイントです!
図書委員の高校生が主人公で、実在の作品や作家が、会話の中に沢山登場。それも含めて楽しめる。
自分の行動と、認識してる自分の気持ちがちぐはぐだったり、
辞書には載っていない、言葉の深い意味を、自分だけの定義を、見つけたかったり。自分のことをわかっていく過程なんだとまぶしい気持ちになった。
高校生の生きる世界って狭くて、見えてないものも、間違えることも沢山あって、でもだからこそ向き合えることも沢山ある。不自由なのに自由だなあと懐かしくなった。