親方と神様
伊集院 静
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刊行日 2020/02/20 | 掲載終了日 2020/03/09
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内容紹介
鋼と火だけを相手に、人生の大半を過ごしてきた鍛冶職人の前に現れたのは、澄んだ瞳をした12歳の少年だった。
少年は、鍛冶屋になりたいから、仕事を見学させてほしいと言う。年老いた職人は少年のその純粋でひたむきな姿に心が動き見学を許した。
少年は、毎日訪れるようになり、職人も鍛冶のことを話してやり、二人は心を通わせていった。
職人は、少年が鍛冶屋になりたいというのは、子どもの気まぐれだと思っていた。
後日、少年の母親が訪れた。要件は、少年が中学校にいかずに鍛冶職人の修行をしたいと言い出したので、ここでは修行できないと説得してほしいということだった。
しかたなく承諾した職人だったが、自分は口べたなので、少年に話して説得できる自信がなかった。話せば話すほど、少年は自分に裏切られたと思うに違いない。
職人は、考えた末、自分が親方から聞いたことを、当時と同じように山へ出かけて、少年に話してみることにした。
山を歩きながら、彼は鍛冶がいかに素晴らしい仕事であるかを少年に話した。
それは、説得とはまったく逆の話だったが … …。
年老いた鍛冶職人は少年を、いかに育てたのか? 子育てとは。人育てとは? 伊集院 静が贈る珠玉の短編小説!
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784751529454 |
本体価格 | ¥1,200 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
年老いた鍛冶職人と少年が山径を行く風景がとても美しい。そんな風景の中で静かに語る親方の言葉が胸に沁みる。絶妙なタイミングで入る木内達朗の挿絵もとてもよい。派手さのかけらもない50ページほどのとてもシンプルな短編だが、心の中にジワリと残るものがある。親方にしがみつき泣きじゃくる少年の姿が忘れられない。
生命サイクルと鍛冶屋と神社
鍛冶屋と言えば火を使う。
火はその一瞬が輝きであり、生命である。
片目しか見えないの少年の浩太と、鍛冶屋の親方六郎が織り成す心の交流を、自然の中でやんわりと熱く描いた短編集。
砂鉄の意志をはその後も継続されていく。
これは生命サイクルである。
ところどころ挿絵によりノスタルジーな感情にもなる。
短編だからこその深読みができた。
本が好き!倶楽部
せいちゃん
可能性をたくさん持っている小さな手。夢中になれることに出会うのは幸せ。けれど、他の道のあるかもしれないことに気づかせるのも一つ。何がいいのかは分からない。もしかしたら他の道でも大成できたかもしれない。かもしれないことを抱えながら生きる。そこに大切な思い出があるといい。
鍛冶屋さんのお祖父さんのところへ作業を見せてくださいといって少年がやって来ました。その真剣なまなざしにうたれて、仕事場での見学を許しました。少年は親方を尊敬し、夏休みの間一日も休まずにやって来ました。
この熱心さは一時的な物だろうと思っていたら、少年は真剣でした。できることなら親方に弟子入りしたいと申し出たのです。
親方は彼に諦めてもらおうと説得するために、2人で鍛冶屋の神様を詣でることにしたのです。
その後、その少年が歩んだ道は、親方が知ったら喜んだでしょうね。
年老いた鍛冶職人の前に現れた少年
ひたむきな態度で見学し弟子にして欲しいと頼むが・・・
というお話
職人と少年が一緒に向かう山の描写がとてもすばらしいし
挿絵がまたいい
50ページ程度の短編ですが読み終えた後の満足感は長編級です
ごく最近くも膜下出血で倒れられましたが復活を心待ちにしています
1人が一生のうちにできることは、小さなことなのかもしれない。でもその小さなことと積み重ねが、大きな形を作る一助となるのだ。という言葉が浮かぶ。
親方と神様。どういう意味だろうと読み出した。
淡々とした、朴訥な親方の毎日。でもその親方の胸の内には自分が見習いだった頃に自分の親方から教わったことが、種火のようにずっと燃え続けている。
継承されるというのは、コピーを作っていくことではないのだ。
土間の三和土から山登りへ、そして飛行機から山々と街を見下ろす視点の変化もまた、秀逸である。
人の成長とは何なのか。人として大切なことは何なのか。静かな短編の中に凝縮している。素直に受け取ってもらえる言葉を丁寧に紡いだという印象の作品だ。読んでよかったと心から思う。
鍛冶屋になりたいと老職人を訪ねる少年。二人が過ごした時間は短いが、少年は老職人の姿から様々なことを学んでゆく。同時に老職人は少年の真摯な姿に自身の子供時代を重ねつつ、これまで感じたことのない感情を知る。老職人の死によって物語は終わったように思ったが、その本当の結末に涙した。
木内達朗氏のイラストがこの静かな作品世界を広げている。作品と一緒に楽しんでほしい。
年老いた鍛冶職人の前に現れた澄んだ目をした12歳の少年。
なぜだか二人は似ていると思った。
一見無愛想で職人気質な親方と一見気弱な少年だけど、二人ともに純粋で、一本芯の通った強さなようなものがある。
そんな共通点が二人を結び付けたのか。
一緒に過ごした時間は短いけれど、親方にとって少年はかけがえない存在であったし、少年にとっても親方は一生の師となった。
それは親方が亡くなっても、少年がいつの日か老いたとしても変わらない。
そんな二人の関係が尊いものに思えた。
木内 達朗氏の美しい装画が豪華。
鍛冶屋の仕事に魅せられ、中学に行かずに鍛冶屋になる夢を持った少年:浩太を諭す場面が山場。
口べたな老職人が浩太に語る話が心を打つ。
小学校の担任:須藤の言葉「鍛冶屋は人間が最初に作った職業のひとつだ」
も印象に残った。加筆部分として、大人になった浩太は・・・。
折しも、鉄鋼業界再編の時期でタイムリーな面も感じた。
六郎と浩太の間で言葉少なな会話が交わされるたび、お互いのことをあまり知らなくても、強い結びつきが生まれていくのが分かる。
話は短いけど、山を一歩一歩登っていくみたいに、静かで優しい時間がゆったりと流れていく。
●「覚悟と本気の想い」
覚悟と本気の想いは連なっていくんだなって
すごく思える素敵なお話でした。
人生をかける覚悟
火をとめて山を登る覚悟
そして、その覚悟の記憶から
業界のドンになってもなお大切にし
それを若者へ伝えていく
それはやっぱり、師匠のその師匠……と連なっている方々が
代々想いをこめたからこそ
連なっていくんだなっと思いました。
なんか非常によかったです。
親方は子どもがいなかったけれども
私は子どもにまず大切な何かを伝えていけたらと思いました
職人という仕事を見つめなおせる1冊。
職人芸という言葉も死語になってしまうかもしれないけれど、器用なだけの仕事は機械が取って代わっていく中で、人が守り育てていくべきものについて考えるきっかけにもなるかもしれない。
義務教育それ自体は、社会の中で人が人として生きていくうえで必須のものだと思いますが(内容や方法が原稿がベストかどうかは置いておいて)職人として生きていくには早くからの修行というのも大切だと思うので、選択肢の多様性という意味では「職人」になれる可能性をつぶすばかりの社会の在り方への疑問も湧いてきました。
年老いた鍛冶屋の元に12歳の少年が訪れる。鍛冶屋になりたい、仕事を見たいと言う。長年1人で毎日鋼を相手にしてきた鍛冶屋と芯の強い少年。少年を思う鍛冶屋は共に山に登り少年にとって一生心に刻む事になる大切な言葉を伝える。少年が大人になろうと、時代が変わろうと大切な事は変わらない。素敵な物語。
伊集院静氏の小説を初めて読みました。鍛治職人の老人と鍛冶屋に憧れる少年のお話。短いストーリーなのに心に響くものがありました。小さな物を一つ一つ集めて大きな力になる。小さな事を疎かにしない。職人の教えは人生の教えに通じるものがあるのだと思った。
純粋無垢な少年と寡黙で職人気質の親方が、心を繋ぐことができたのは鉄を愛するというたった一つの強い想いだけだったと感じる。そのたったひとつが二人を分け隔てる全てのものを超える確かなもので、二人は気質も似ていたんだと感じた。ラストは少年は出世しているが、職人として親方のように決して他からもてはやされることもなく自分の中の神的なものに近づいていく道を選ぶのかと思っていた。
児童書の範疇であり余計なものを排したシンプルな文章は潔く心に残った。挿絵も美しく、鍛冶屋の静謐な世界を表現していらと思う。