トランスジェンダーの私がボクサーになるまで
トーマス・ページ・マクビー
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刊行日 2019/08/31 | 掲載終了日 2019/12/13
ハッシュタグ:#トランスジェンダーの私がボクサーになるまで #NetGalleyJP
内容紹介
ひとりのジャーナリストが身をもって経験した「男らしさ」の意味
男は、なぜ闘うのか?私は、何と闘うのか?
女性として生まれた著者。
しかし心の性と体の性が一致せず、30歳の時に男性になる。
ただ、外見は男性になったものの、社会で「男らしく」行動するとはどういうことか、かえって悩むことに。
そこで、最も男らしいとされているボクシングの世界を見ることに決め、アマチュア・ボクシングのチャリティーマッチに思い切って応募する。
「男らしさ」、そして「男性」とは何なのか?
男性としても、ボクサーとしてもまだ歩き始めたばかりの自己を見つめたノンフィクション。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784620325972 |
本体価格 | ¥2,000 (JPY) |
関連リンク
NetGalley会員レビュー
男らしさとは何か?。トランスジェンダーのボクサーが、それを考える本
ネタバレあり
著者は、ジャーナリストである
チャリティーマッチで、マジソンスクエアガーデンでボクシングの試合をしたのです
数か月間、仕事後に特訓をしました
その記録をまとめたのが本書です
著者は、トランスジェンダーです
つまり、元女性
テストステロン(男性ホルモンの一種)を注射し性別を変えました
本の表紙の人が彼です
かなりのマッチョ
元女性とは思えない
この本には、女性が男性になる過程やら
具体的な方法やらは述べられていない
マッチョな男らしさに憧れて、ボクシングに情熱を傾ける様が描かれているのだ
彼は、少女時代に継父に性的な虐待を受け続けていた
学生時代付き合っていた女性たちからは「あなたは男みたいだけど、それよりまし・・・」と言われていた
念願の男になった彼は、男らしさを意識していた。それに憧れていた
冒頭、街中でレストランの写真を撮っていたらおっさんにからまれた
喧嘩になりそうになる
その時、こいつをぶちのめしたいと思う
子供の頃から、男性の暴力を見せつけられて育った彼は
無意識に女性に差別的な態度をとる
マッチョな自分を誇示しようとする
私の抱く中性的でなよなよした元女性のトランスジェンダーとは、かなりイメージが違った
女性ボクサーとの練習を嫌ったりする場面は
男よりも差別的にすら見えた
そんな彼がボクシングを通して少しずつ考え方を変化させていく
男になって、彼が求めたものをこう表現している
太陽光を求める植物のように、自分にとって有利なもの・・・、攻撃性、野心、度胸に接近していった
彼は、路上で喧嘩になりかけた時から、あることを考えるようになった
何故、男は闘うのか?
彼の母親は素晴らしい
名言を吐いているので披露したい
継父の性的暴力が発覚した時に、こんなことを言って彼を慰めた
あなたには誰も触れることができない黄金の芯がある
この言葉を胸に抱いて、彼は色んなものと戦ってきた
話しを元に戻す
男は、何故、戦うかについてである
マイケル・キンメルがこんなことを言っていると著者は言う
自信がある時はやらない。己の力が脅かされていると思うから、喧嘩をするのだ
男たちは、自分を「本物」だと証明するため、仲間の評価や侮辱に神経をとがられているのだ
キンメルの別の言葉
攻撃の対象が合理的なターゲットであると理由ずけする
なぜ、上司ではなく妻を殴るのか?。・・・最低な野郎なのに、何故、そっちを殴らないのか?。自分より力があるからだ。上司は合理的なターゲットではない
「合理的なターゲット」とは、支配できる可能性のある相手を指す。つまり、自分よりも弱く、地位も低い者だ。・・・勝てる相手をターゲットに選んで自分の価値を証明しようとする
これって、男らしさでなく、イジメでしょ!
ニオベ・ウェイ という人の考え・・・
16歳から19歳の間にすべてが変わる
同性の友人と仲良くしすぎると「女みたい」「ホモ」とあざけられると知るのだという
少年たちは、人と繋がるには暴力しかないと学ぶ
アメリカ人の男が「男らしく」と言ったとき、それは「女とは違って」という意味だ
女でないことだけが、男であることの証明だ
ウェイの意見は続く
誰かが人間であることの根拠を、ほかの誰かを非人間として扱うことで証明している
そんなアメリカ文化を・・・知っていた
あなたの人間性が、誰かの人間性が保証されていない上に成立しているなら、それは人間性とは言えない
・・・他者を攻撃することが、強さの証だという物語なのだ
男らしさの定義は・・・攻撃的・・・最大の誤解は、男らしさの定義がひとつしかなく、誰もがそうだと思っている、されていることだ
著者は、自分の考えが他人から影響を色濃く受けていたことに気づく
私が泣いていた時の周囲の困ったような顔。「ボクシングをやっている」と言った時の肯定の頷き。目のまわりの痣やボクサーとしての体、母が死んでからの沈黙、「気丈」「よくやっている」「強く振る舞っている」という賞賛
つまり、アメリカ人の言う男らしさとは、全体の圧力がかかった「こうあるべき」という形だったのだ
男らしさ、女らしさを強制する社会なのだ
こんなもんは、日本人の私には1ミリも理解できんのだよ
さすが、トランプを選んだ国だなと思う
これは卑怯者の論理だ
フィッツジェラルドの言葉に、こんなのがある
一流の知性であるかどうかは、正反対の考えを同時に持ちつつ、なお機能できるかどうかで問われる
つまり、自分を俯瞰して客観的に見れるかどうかが大切なのだ
アメリカ人のマッチョには、そういう視野はないように思えてしかたがない
すごく独善的で暴力的だ
私は、マッチョの支配する、暴力や銃社会が嫌いだ
だから、この著者の意見に賛同する
プレーネ・ブラウンの言葉を紹介しておく
これがアメリカ文化だ
男が恥という感情を覚える一番のきっかけは、弱いと思われることだ
だから、弱い者いじめしたり、マッチョぶるのだ
それを子供の頃から押し付けられて育っているから
人権とか無視して、人種差別するのだよ、きっと・・・
自分は弱くないと他人に認めさせるために暴力的になっているだけなんだ
これって、ドナルド・トランプそのものじゃないか!!
著者が戦っているのは、この見えないアメリカ文化という巨人なのだと思う
この戦いは長く辛い戦いになるのだと思う
2019 11/14