色彩
阿佐元明
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刊行日 2019/09/17 | 掲載終了日 2019/10/04
ハッシュタグ:#色彩 #NetGalleyJP
内容紹介
第35回 太宰治賞受賞作
応募作品総数1201篇の中から、荒川洋治、奥泉光、中島京子、津村記久子の四氏によって選出された、第35回太宰治賞受賞作がいよいよ単行本化となります。淡々と描かれる日常が、深い感動へと誘う傑作!
プロボクサーの道をあきらめた千秋は、懐の深い親方の下で塗装業の仕事に就き、日々はそれなりに充実している。そこへ美術の専門学校を出た新人加賀君が入ってくる。仕事の覚えは早く、酒には弱いが周囲に好意的に見守られる加賀君に違和感をぬぐえない千秋。嫉妬とも違うその違和感の正体とは? 塗装業で働く人々の仕事と日常を繊細な心理描写と共にリアルに描く。
すべては、なにかが幻のようにかき消された後の話なのだ。 でも、それゆえに、どんな人にでも、こうした小さな気づきがあって 人生は進むのだと思わせる。──中島京子(「選評」より)
出版社からの備考・コメント
今回アップしたデータは、第35回太宰治賞の最終候補作四篇を収める『太宰治賞2019』より、受賞作「色彩」を抜粋したものです。刊行時には内容が異なる場合があります。ご了承ください。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784480804891 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
プロボクサーとして生きていきたかったけど、ケガであきらめた千秋。今彼は塗装業の職人として働いている。親方も同僚もいい人で、現場の作業はきついけど、楽しく仕事をしています。
現場仕事は、いろいろな苦労があります。屋外であれば夏は暑いし冬は寒いし。屋内であれば寒気が悪くて誇りまみれになったり。高いところや危険な所での仕事がたくさんあります。ですから保安上も休憩をきちっと取ることが大事なのです。なのにそれを理解しないで「休んでばかりいる」とクレームをつけてくる人もいます。逆に、ご飯作ったから食べていきなさいと言ってくれる人もいます。
仕事も大変だけど、クライアントとの関係も結構大変なんです。
会社に他人を増やそうということになり、美術系の専門学校を出た加賀くんが会社にやってきました。ひ弱そうな姿を見て、こんな子が現場仕事をやっていけるのかと不安に感じたけれど、仕事の覚えも早く、あっという間に会社になじんでしまいました。
線が細くて、頼りない感じで、でもそこが人に好かれるポイントでもある加賀くんのことを、千秋はどうも好きになれないのです。
千秋は、自分が何のために生きているかという目標を見失っていたのかもしれません。加賀くんとの関りから、それが分かってきたのは千秋にとってとても良いことだったのだのでしょうね。
外壁をピンク色に塗るときの気分の高揚感や、壁一面の空と木々の絵を通して、
千秋が加賀君と気持ちをシンクロさせていく過程が読んでいて心地よかった。
『何でも食べなければ大きくならない』の信念で千秋たちに塗装以外の仕事の技術を積ませ、ともすれば、行き場をなくしそうな若者たちを支えている親方の人柄がいい。
逃ていたこと、目を逸らしていたことに対して向き合うようになっていく千秋の心境が静かに伝わってくる。
あきらめるのは簡単である。後ろを向けばいいだけだから。
ボクサーの道を断念し大工の道でそれなりに生活している千秋。そこへ新人でやってきたのは美術の専門学校を出た加賀君。
不思議なのは対比するように描かれていないのに勝手に比べてしまう読み手側の心理。対比というかむしろフィードバックに近い。
そしてそれは僕たちの日常にも当てはまる。
自分の中では、やりたいことや好きなことへ目をそらし後ろをむいた時に人生はゆっくり加速していく。矛盾するようだが退化とも言える。
僕はヘラヘラと笑って生きたくない!!
そんな気持ちが沸き起こる一冊でした。
本が好き!倶楽部
せいちゃん
静かな作品です。
加賀が仕事を通じて成長していく姿が淡々と描かれています。
そんな加賀を見ながら、焦りを感じる千秋。
千秋の心の葛藤も丁寧に描かれています。
親子の関係や夫婦の関係、同僚の関係。
焦り、戸惑い、同情など人が生きていると感じる負の感情を
「ああ、そういう気持ちわかる」と読んでいて感じました。
第35回太宰治賞受賞作。
プロボクサーだった千秋はあることをきっかけにその道を断念し、温かい親方のもと塗装業の職につく。
妊娠中の奥さんもいて日々、過ごしていた。
そんな中、美術の専門学校を出た加賀くんが職場に新人として入ってきたことから少しずつ変化していく…。
心理描写が丁寧で淡々と描かれているのに思いが伝わってくる。
千秋の苛立ち、嫉妬に近いような何とも言えない気持ちなどひしひしと感じられた。
千秋が元プロボクサーなので少し前に町屋良平さんの『1R1分34秒』の空気とほんの少しだけ被るところもあったけどまた全然違う。
いろんな理不尽なことがあったり、辛くなるところもあるけど少しずつ色んなことが変わり始めていく。
読み進めていくうちに自分自身もほんの少しでも前向きになろうと思うことができた。
淡々と描かれながら静かな感動があり、余韻がとても残るような素敵な作品。
太宰治賞受賞作では辻内智貴さんの『青空のルーレット』に入っていた「多輝子ちゃん」、岩城ケイさんの『さようなら、オレンジ』は既読。
今作も過去の既読の受賞作のような空気を感じることができ、読んで良かった。
阿佐さんの他の作品も読みたいな。
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太宰治賞受賞作ということで期待して読んだ。元ボクサーの塗装業の男が主人公で、そこに元画家志望の青年が入社してくる。何故か、彼は青年を嫌い。夢が破れた者同士という同族嫌悪の感情なのか、それとも夢を諦めきれずに不完全燃焼している飲み歩いて憂さ晴らししている青年に腹をたてているのかわからんが、とにかく嫌う。ある工場に空の絵を描く共同作業を通して、何か1つみんなが前に進む。それぞれの夢破れた男たちに、この作業は色彩を与えてくれたということなのかな。