電気じかけのクジラは歌う
逸木 裕
この作品は、現在アーカイブされています。
ぜひ本作品をお好きな書店で注文、または購入してください。
出版社がKindle閲覧可に設定した作品は、KindleまたはKindleアプリで作品を読むことができます。
1
KindleまたはKindleアプリで作品を閲覧するには、あなたのAmazonアカウントにkindle@netgalley.comを認証させてください。Kindleでの閲覧方法については、こちらをご覧ください。
2
Amazonアカウントに登録されているKindleのメールアドレスを、こちらにご入力ください。
刊行日 2019/08/06 | 掲載終了日 2019/08/06
ハッシュタグ:#電気じかけのクジラは歌う #NetGalleyJP
内容紹介
クジラ=AIと対峙せよ――!
さもなくばヒトの創作は、終わる。
AIの下請けとなった元作曲家に 自殺した天才作曲家が残した謎は未完の新曲と“指”だった。
『虹を待つ彼女』で横溝正史ミステリ大賞を受賞し、 ますます活躍の場を広げる逸木 裕による心揺さぶる音楽ミステリー!
【あらすじ】
ヒトはもう、創作らなくていい―― 人工知能が個人にあわせて作曲をするアプリ「Jing」が普及し、作曲家は絶滅した。 「Jing」専属検査員である元作曲家・岡部の元に、 残り少ない現役作曲家で親友の名塚が自殺したと知らせが入る。 そして、名塚から自らの指をかたどった謎のオブジェと未完の新曲が送られてきたのだ。
名塚を慕うピアニスト・梨紗とともにその意図を追ううち、岡部はAI社会の巨大な謎に肉薄していく――。
私達はなぜ創作するのか。
この衝動はどこから来るのか。
横溝正史ミステリ大賞受賞作家による衝撃の近未来ミステリー!
出版社からの備考・コメント
校了前のデータを元に作成しています。 刊行時には内容が若干異なる場合がありますが、ご了承ください。 ※発売前の作品のため、ネタバレのレビュー投稿は極力お控えいただけますよう、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
おすすめコメント
「完全なある物を創作しようとする努力ほど、心霊を純潔ならしめるものはない」
ルネサンス期の画家・ミケランジェロの言葉です。 このように創作とは、ひらめきや人間性を必要とする、ヒト固有のものだと言われてきました。
ですが、私達はAIが何を成し遂げてもおかしくない時代に生きています。
もし、AIが人よりも美しい創作をできるようになったとき――私達は何のために創作をするのでしょうか?
この作品は、こんな問いに逸木裕さんが全身全霊で向き合った作品です。
小説家でもあり、ウェブエンジニアでもある逸木裕さんが悩み苦しんで出した答えを、 どうかその目で確かめてください。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784065168189 |
本体価格 | ¥1,700 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
音の迷宮の出口で待つものとは・・
AIの発達した近未来、元作曲家の岡部数人に衝撃のニュースが届く。同じバンドで活躍していた名塚楽が自殺したのだ。天才と言われた名塚が遺した謎を追うとそこには・・・
「普通」の人・岡部のぶれっぷりが半端なく、音楽・才能に翻弄される様はもの哀しく感じる。「産み出す」側の人にはこれから突き付けられる問題が明示され、ある意味ディストピア小説とも言えよう。
オキアミなのか、空港なのか・・
音楽を創ること、音楽を奏でること、音楽を聴くこと。
そこには表現をしたい人と、享受することで満足ができる人という大きな隔たりがあるように見える。
だがしかし、自分好みの音楽をただ受け取るだけで人間は満足できるだろうか。
自らが作り出せないとしても、本当にただ与えられるだけの音楽にも魂が宿っているのだろうか。
すでに今、人は娯楽すら自ら選び取ることをしなくなりつつある。
AIが自分にとってぴったりの音楽を作り出してくれる世界。きっとその世界はもうすぐそこまでやってきている。
決して遠くないその世界の中で、かつての友人の死を知り行動を起こす主人公。
友人の死の真相を探る中で知ってゆく、自らも目を背けてきた真実。
人を騙すこと、騙されること。
赦すこと、拒絶されること。
離れること、近づくこと。
この一つの物語の中には様々な人の苦悩と、その中でつかみ取った答えが散りばめられている。
キラキラと光る壁のシールから私に届いた、音楽だけではない何か。
これからの人生の中で新しい音楽への喜びを知る度に、電気じかけのクジラは私の中で歌うのだろう。
近未来、私達はAIによって職を失うかもしれない。そんな危機感は持っていた。
しかし、作曲家というクリエイティブな分野にまで及ぶとなると、AIによって作られた音楽はどのようにして人の心を動かす事ができるのだろうか。
そんなAIとの共存の世界で、1人の作曲家の死をきっかけに、作曲家たちの苦悩や葛藤の中で展開していくミステリー。
彼らの心の動きと共に複雑に絡み合う謎が膨らみながら、二転三転する事件の真相にぐいぐいと引き込まれてしまった。今後、AIは私たちにどのように影響してくるのだろうか。
音楽に対するきらめく未来が感じられたエピローグは、希望に満ち溢れ、とてもすがすがしい気分になれた。
ヒトの創作に未来はあるのか?
AIを超える音楽を作れるのか?実際に起こり得る題材で…物語にどっぷり浸かりました。登場人物達の苦悩や思惑が海の様に静かに広がり、鯨に飲み込まれ、かき回されていく…そんな感覚でした。
音楽がAIによって作られる未来。商業音楽家だった主人公は、仕事がなくなり、音楽AIのデータを集める仕事をしている。そんなとき、旧友の天才音楽家が自殺した。まだ、音楽AIでもこられない才能をもっていたのに、なぜ?主人公は、その謎を追いかけていく。近未来、音楽、殺人はおこらない、かなり限定された状況のストーリーなのに、ここまで読ませるのは、筆力があるのだろう。
どんどんと深海に深く深く沈められるため、ひたすら光が見たくて読み進めさせられる。
とても苦しい時間が続いたが、海の中でも呼吸ができるよう進化した。
謎の見せ方が上手く先が見えないので、一気に読みたい。
AIは人を超えるのか。オリジナルよりオリジナルらしく、あたかもその人の創造物かのようなものがデータから生まれる。そういった社会が訪れるのだろうか。その時人は、人の役割とは何か、存在価値を見出さなければ苦しくて生きていけない。
冒頭の20秒に空白のある曲を残して友人が自殺した。
創作活動の意義にミステリ要素を絡めた展開。
回りくどさを感じたが、空白の20秒の意味に気づいたラストに感動。
派手さはないが、読み切った満足感が得られる作品。
人工知能が音楽を作る。ソフトに手伝ってもらう創作は既に行われている。
AIが作曲家の仕事を奪う日は来ない。「音楽の本質は波及だ」名塚の言葉に同意。
プロ奏者は仕事は減るが、価格が下がるかも知れないので、消費者にはよいことだ。
個人の好みに合わせて作曲をしてくれるAI「Jing」が作曲の殆どを担う時代。作曲家の道をあきらめ、自らJingの検査員となった男の元に、自殺した天才作曲家の名塚から曲の一部が届く。名塚は何のためにこれを送ってきたのか…。人間の作ったAIが人間の作るものを凌駕するという意味、近未来で苦悩する音楽家達の心の叫びを肌で感じるような時間でした。それゆえ逆に主人公に好感が持てなかったのは残念でしたが、ミステリを絡めSFでも読みやすかったです。私はこんな時代が来ても、人間の手で作るものは別のものだと信じたいです。
AIが作曲できるようになったことで人間の音楽家が絶滅しかけた世界。
しかし、夢や仕事が消えても、音楽を好きという気持ちは消えない。
名塚の自殺以降、物語に大きな事件は起きないが、だからこそ、岡部の静かな覚醒をじっくりと感じることができる。
そして、彼をそこへ導いた名塚の意思が明らかになった時、ぐっと胸が熱くなった。
1冊でSF・音楽・友情を堪能できて、あと味もすっきりした作品。