偶然の聖地
宮内 悠介
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刊行日 2019/04/23 | 掲載終了日 2019/04/23
ハッシュタグ:#偶然の聖地 #NetGalleyJP
内容紹介
天才・鬼才――宮内ワールド全開!!
ドラゴンと呼ばれる零下170℃の寒気団が吹き荒れ、登山者の多くは意識変容を起こし、遭難が多発する神秘の高山イシュクト。そこで失踪した祖父の痕跡と「厄介事」の始末のため、私は現地へ旅立つ――。
天才・鬼才――宮内ワールド全開!!
ドラゴンと呼ばれる零下170℃の寒気団が吹き荒れ、登山者の多くは意識変容を起こし、遭難が多発する神秘の高山イシュクト。そこで失踪した祖父の痕跡と「厄介事」の始末のため、私は現地へ旅立つ――。
出版社からの備考・コメント
校了前のデータを元に作成しています。 刊行時には内容が異なる場合がありますが、ご了承ください。
おすすめコメント
本書には著者による300を超える本文への註が含まれています。
連載時の原稿に大量の註を入れることを思いついた。これならば、連載時に読んでくれていた方にも別の読み味を提供できるに違いない。
ある打ち合わせの場でぼくはこう述べた。
「『なんとなく、クリスタル』方式でもいいですか」
――かくして、原稿用紙にして100枚を超える註がつき(途中、幾度か自分は何をやっているのだろうと我に返った)、現在の形にまとまったのであった。(宮内悠介)
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784065153345 |
本体価格 | ¥1,650 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
世界が抱えるバグ、その最たるものである「イシュクト山」と、それに挑む世界医、それぞれに関わる人々が繰りひろげる、巡礼のような旅のお話。ということになるのだろう、と思います。
著者本人の手による註がたくさんついた、めずらしいスタイル(おそらく)の作品。
ひとつめの註で、作中のとある気象現象に対し、「とある漫画作中にしか見ることはできないが、註の筆者はその存在を信じている。ゆえに本作においてその現象は実在する」(意訳)と言及されます。
ここを読んだ瞬間、「それはアリなんですか!」とツッコミつつも「好き!!」となりました。
作中の現実に、初っ端から、他者による創作物の現実がまぎれ込んでいる。
それを註によって意識させられることにより、作品、ひいては創作物が内包する世界のひろさをあらためて感じ、視界のひらけるような心地を味わったからです。
読みはじめて早々に感じたこの豊かさ、広大さは、ページを捲るにつれて、さらに拡大していきました。(ツッコミの頻度も増していきました)
ネタバレになるといけないので詳しくは書けませんが、それはもう、何度も何度もツッコミました。(とある章にいたってはほぼ全編ツッコんでいました)
ですが、不思議なことに、だんだんとこう感じはじめたのです。
「こんなにもツッコミを入れてしまうのは、わたしが狭量なだけではないか?」
終盤にいたっては、ツッコむたびに反省しました。
「この程度の出来事で驚くなんて、なんて心が狭いんだ!」
「もっともっと、柔軟な思考を!」
そんなふうに、こちらの常識(だと思っていたもの)や思いこみに疑問符を投げかけてくる、強力な作品です。
作品世界と現実世界が註を通して接合する、イシュクト山そのもののような作品です。
この作品『偶然の聖地』を巡り、世界医たちが戦いを繰りひろげていても驚きません。
こちらが気づいていないだけで、文が入れ替わったり、章が消えたり増えたりと、日々変容をくり返している本なのかもしれない。
そう思いながら、手に入れた紙の本を見つめています。
余談。
氏の作品『超動く家にて』でマニ車がお気に入りとなってしまったわたしは、今作で明かされた、マニ車に関わるバグが気になって仕方がありません。
ゲラをダウンロードして読み進んでいたが、実物を手にしたら、どうしても欲しくなり買ってしまった。装丁、カバーを外した表紙のエッセイ、本文に膨大な注をつけたページデザイン、もう全てがモノとしての本の魅力を体現していて、これを買わずにどうする!!と。というわけで是非みなさんも味わってくださいね、持っているだけでカッコよく、いい気分になれるこの感じ。(読んだらもっといい気分になれること間違いなしですが。)
さてストーリーはといえば・・・
世界には数々のバグが存在する。例えば、秋の後に訪れる短い春、旅春など。それは、世界の側がかかる精神疾患、と言われていた。そして、その不具合を治す(デバッグ)のは世界医の仕事。物語は、複数の登場人物を巻き込み、とびきりデカいバグ、イシュクトを巡って展開してゆくのだが。な〜んて言っても、わかったようなわからないようなわからないような、だと思うんです。だけどこれが最高に面白く、エキサイティングで、しかもとんでもなく胸キュンラストなのです。
ガチガチの文系の私が、プログラミング用語にいくらかひるんでしまいそうになると、すかさず膨大な作者注が「読み飛ばして大丈夫です」「言ってみたかっただけ」「なぜ書いたのか忘れた」などなど程よく脱力させてくれて、絶対に置いてけぼりにはされないのである。なおかつ作者注で作者自身の小さい頃の記憶であったり、バックパッカー時代の経験だったりが語られ、もう一つの物語が立ち上がり、もうグッと作者に近づいた気分になってしまって、なんというか好きが加速してしまう感じなのだ。
読み始める前は、この注は、読むとき邪魔にはならないのかな?と思って心配だったのだが、そんなわけで、注のおかげでこっちの世界にグッと引き寄せて読むことができた。つまり、これはもう全部で一つの作品であって、連載時とは別物の、新しい形態の文学であるとすら言えてしまうのではないかと思った。
一言で言えば、宮内悠介は天才であるということに尽きます。
もう付いていきます!