雪ぐ人　えん罪弁護士 今村 核

知っているつもりだった。有罪率99.9%の数字は、いわゆる起訴できるケースのみだからよね？と誤解していた。
遠い世界の話だと思っていた。自分がやってもいない罪を問われるケースなどあり得ないと。
そんな風に考えていた自分が恥ずかしくなる気持ちと、このまま知らなかったで放置して良いのかという焦燥感に押されながら一気に読んだこの一冊。
えん罪を生み出す刑事司法の構造的問題と、無罪にするための立証への厚すぎる壁。
これに問題意識を持ち、そういった目で裁判を見るきっかけをこの本は導いてくれる。
今村弁護士の既刊の本も読みたい、読まねばと強く思う。

読んで、涙がこぼれた。冤罪弁護士、今村さんの仕事の向き合い方、そして彼の生い立ち。エリートに生まれたからこその苦悩、その辺の困っている人を全力で助けてくれる彼の仕事の仕方に感動しました。ドキュメンタリーも是非見てみたかったです。最後に描かれていた痴漢冤罪の弁護に関して、明らかな証拠があるにもかかわらずの罰金判決。やるせなくて読んでいるこっちまで憤りを覚えました。国選弁護人としてそんなにお金を稼ぐことはできずとも、信念を持っているこの弁護士さんに、心から敬服します。

警察と検察が真剣に捜査してくれたら、裁判で私は無実ですと訴えたら裁判官はちゃんとわかってくれると不祥事とかなんだかんだあっても大抵の人は信じてると思う。
毎日何時間も「お前が犯人なんだろ」と言われる、最後の頼みの綱の弁護士にまで起訴されたら99.9%有罪になるから否認しないで情状酌量の減刑を目指しましょうと言われたら…。心が折れて自白した人は一体何人いることだろうか。

もうこの国の裁判は有罪か無罪か決めるところではなく有罪を確認する場所になってしまっているなんて法の番人なんかいないじゃないか。

自分に火の粉が降りかからなきゃ解らない現実の落とし穴の中で一緒にもがいてくれる人がこの人だと思った。でも、反対にこの人が苦労しなくても立証が認められるように、またこの裁判はどうだったのか採点というか評価できる機関があればいいのにと思った。